執筆者プロフィール
竹内 悠(たけうち ゆう)
法学部 慶應義塾大学法学部准教授研究所・センター 法学研究科附属宇宙法研究センター所長専門分野/宇宙法、国際法
竹内 悠(たけうち ゆう)
法学部 慶應義塾大学法学部准教授研究所・センター 法学研究科附属宇宙法研究センター所長専門分野/宇宙法、国際法
6月12日にSpace Xが果たした株式上場は、その規模から、史上最大と評された。宇宙企業が世間からこれほどの注目を浴びたのも宇宙活動70年の歴史上で初めてのことだ。私は2025年4月に現職へ着任したが、それまでの18年間をJAXAにて法務系の職員として過ごした。駆け出しの頃の宇宙活動は国家による先端技術の獲得が主眼で、経済成長とは無縁だった。それからわずか20年、日本をはじめ多くの国々で成長戦略の中核に位置付けられ、経済的にも高い注目を集める産業に変貌した姿は目を見張るばかりだ。おかげで、ニッチだった「宇宙法」も需要が伸び、慶應法学部に専任を設置する英断があり、現在の私がいる。
もっとも宇宙法研究は欧米では一定の歴史を持つ。ドイツのケルン大学航空・宇宙・サイバー法研究所は昨年ついに100周年を迎えた。私が修士課程で学んだカナダのマギル大学航空宇宙法研究所は1951年の設立で、モントリオールに国際民間航空機関(ICAO)を誘致した際に航空法研究の拠点として開設された。1985年設立と比較的新しいオランダのライデン大学国際航空宇宙法研究所は、今や世界規模で人材を供給している。慶應宇宙法研究センターは、私の師匠である青木節子名誉教授がJAXA法務課の協力を得て2012年に設立した。日本唯一の宇宙法研究拠点として、居並ぶ老舗に比肩すべく研鑽に励んでいる。設立以来、JAXAとの共同研究を主軸に据えてきたが、更なる発展を見据えた人材の充実が目下の課題だ。読者諸氏のご助力を賜りたい。
宇宙活動は世界規模で急速に商業化し、政府部内で完結していた議論も法的論点として表面化し、議論百出の状態にある。かつては国際法の一角としての「国際宇宙法」が中心だったこの分野は、各国の国内行政や国際商業取引等との連関も扱う「宇宙法」へと進化した。あまりに発展が急で、官民ともに宇宙法の素養を持つ人材は不足しており、国内はもとより、アジア太平洋地域への人材輩出も課題である。
2027年、センターは設立15周年を迎える。1月27日には三田にて拡大版年次シンポジウムを開催し、ありがたいことに国連宇宙部も共催に駆けつけてくれる予定だ。師匠が慶應で手塩にかけて育てたこの分野の翼をさらに大きく広げていくことが、私の使命と思っている。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。