気がつけばもう7月に入り、春学期も終盤を迎えている。今年は例年より早い6月のうちから2度も台風に見舞われているが、それを除けば久しぶりに梅雨らしい梅雨を迎えているような気がする。例年梅雨明けが早まっているので、6月のうちから猛暑が始まってしまうのではと戦々恐々でいたが、幸い神奈川県ではまだ梅雨は明けていない。とはいえ、真夏の到来はもうすぐそこだろう。子供のころは夏をワクワクして迎えたものだが、近年の暑さを考えると憂鬱にしかならない。
ヨーロッパ各地では、6月の後半から末にかけて熱波に襲われ、数多くの死者も出ているという。フランス、イギリス、ドイツといった国々ではクーラーがそれほど普及していないので、40度を超えるような暑さは、健康な大人であっても応えるだろう。パリは2030年に向けて市域の緑を大幅に増やす計画が進行しているが、その目的の一つが夏の暑熱対策である。樹木が存在すれば、日陰ができるのはもちろんのこと、植物の蒸散作用により気温の冷却効果も期待できる。場所によっては約4度もの冷却効果が期待できるそうである。
去る5月24日には、日経新聞で「「緑の日傘」消える日本、街路樹50万本減 世界の都市整備と逆行」という記事が掲載された。東京23区では、2013年から2022年の間に、樹木の枝葉が地表を覆う割合(樹冠被覆率)が9.2%から7.3%に減少し、12平方キロメートルの木陰が失われたという。一方、国外の都市では、樹冠被覆率を増加させており、パリでは2025年時点で17.6%、シドニーは2022年時点で19.8%、摩天楼で有名なニューヨークは2021年時点で23.4%である。
東京23区に限らず、日本では近年街路樹や公園の樹木が伐採されている。これは各地で倒木による事故が多発していることに起因している。最近では世田谷区の砧公園で3月はじめから4月にかけて4回の樹木の倒木があり、けが人や車両が損傷したりする被害が発生し、大きく報道された。日本の都市では、高度経済成長期のころから盛んに街路樹などが緑化され、それらの樹木が一斉に大径木化している状況にある。大木の維持管理には大きなコストがかかることもあり、樹木が更新される際にはハナミズキなど巨木にならない樹種が選ばれることも多い。また、私有地においては相続の際に樹木が伐採されて土地が売却される。その結果として、世界のトレンドと逆行してしまっているようだ。
私は昨年度から日本の都市の街路樹のあり方を探る共同研究を開始した。もちろん国や自治体も手をこまねいているわけではなく、様々な対策を検討している。少なくともこの緑あふれるSFCでは、都心よりもぐっと涼しく感じられる。日本の都市でもどのように緑陰を増やしていけばよいのか探っていきたい。