慶應義塾

看護医療学部25周年を迎えて

公開日:2026.08.21

執筆者プロフィール

  • 永田 智子(ながた さとこ)

    看護医療学部 学部長

    永田 智子(ながた さとこ)

    看護医療学部 学部長

慶應義塾における看護教育の歴史は、1918年に北里柴三郎博士が「看護婦養成所」を設置したことに始まる。その後、厚生女子学院、看護短期大学を経て、2001年に看護医療学部が誕生した。当時は介護保険法の施行、医療制度の抜本的改革、保健師助産師看護師法の改正など、医療・看護の高度化とケアシステムの改革が急速に進められた時期である。新時代の教育・研究を推進する使命を帯びて誕生した本学部は、時代の変化に応じたチャレンジを重ねながら、これまでに2000人以上の卒業生を輩出してきた。


2018年に慶應看護100年を記念するイベントが挙行されたのち、次の節目として学部開設25周年記念行事が企画された。当時の学部長であった野末聖香君(現名誉教授)の指揮のもと、2024年4月に教員と卒業生から成る学部25周年記念企画委員会が設置されるとともに、慶應看護アーカイブ委員会が各種媒体の作成にあたることになった。


まず行われたのは25周年記念のロゴマーク作成であった。作成に当たっては企画委員会が学部25年の歩みや未来について意見交換を重ね、最終的には在学生・卒業生・教職員の投票をもとに決定された。ロゴの中心には地球がおかれ、世界から学び、世界へ貢献する学部の姿勢が表現されている。笑った口元を思わせる曲線には、学部で培った学びが未来の笑顔を創り出す“架け橋”となることへの願いが込められている。このロゴマークは、ホームページやポスターのみならず、Zoom背景や名刺にもデザインされ、学部の皆に愛されている。


学部開設25周年記念行事は、6月14日に湘南藤沢キャンパス看護医療学部校舎で行われ、塾長をはじめ塾内の役職者の方々や歴代の学部長、慶應看護の同窓会組織である紅梅会の方々等のご列席を賜り、卒業生や元教職員など多くの方々にご参加いただいた。


記念式典においては、伊藤公平塾長が、小泉信三先生が謳われた「愛」に基づく学部の理念を踏まえた熱いエールを送ってくださった。また医療担当の副学長である北川雄光常任理事と、湘南藤沢キャンパスを担当する土屋大洋常任理事は、各々のご経験を交えながら看護医療学部への思いと期待を語ってくださり、慶應義塾大学病院看護部長の加藤恵理子様、2007~09年に学部長を務めた山下香枝子様、紅梅会の元会長である茶園美香様からも温かいお祝いと激励のお言葉をいただいた。学生の海外研修を支援する青田与志子記念教育研究奨励基金の創設者のご子息である青田英輔様からは、思いの詰まったビデオメッセージを寄せていただいた。また、看護医療学部の卒業生の活躍に焦点を当てた25周年記念ムービーも披露された。最後に2名の学部4年生が、これまでの学習や実習での経験を通して考えた看護学の難しさと奥深さ、今後の挑戦についての未来宣言を高らかに述べて、式典は幕を閉じた。


続いて、記念シンポジウム「先導者たちが切り拓く看護の知──現場を変える、未来をデザインする──」が開催された。このシンポジウムは、学部で培った姿勢や志を糧に多様な現場で日々奮闘する卒業生たちによって、実践を通して見出された「看護の知」を共有し、未来の看護医療の展望を深めることを目指し企画された。医療の第一線で活動するがん看護専門看護師、助産師として活躍してきた学部教員、訪問看護ステーションを経営する会社の代表取締役である在宅看護専門看護師、そして国際機関のスタッフという、様々なフィールドで活躍中の4名が、学部での学びと現場での経験、今後の展望について発表し、卒業生や在学生らとの活発な質疑応答が行われた。


看護医療学部の特徴として、看護医療の背景を活かして起業する卒業生が多いことが挙げられる。ソーシャルアントレプレナーシップ・ビジネスコンテスト「看護の虎」では、昨年度新規開講された「看護医療ソーシャル・アントレプレナーシップ入門」を受講し、授業内でビジネスプランを練った4組のプレゼンターが登壇した。各自の事業計画のプレゼンに対し、起業経験のある卒業生と教員の審査員から鋭い質問やブラッシュアップのアドバイスが飛び交い、ディスカッションを経て最優秀賞が決定された。大勢の参加者の前で発表し、先輩方から直接指導と激励を受けた経験と、ここで得られた人的ネットワークは、今後のキャリアにおいて貴重な財産となることだろう。


このほか、地域看護・保健師三田会の交流会や、母性・助産分野研究会の同窓生の集いも開催された。


校舎内には、学部の歩みや卒業生アンケートの結果をまとめたパネルのほか、18の個人・団体による展示が行われた。展示の内容は、卒業生が設立した団体・法人・企業等の活動紹介(看護職のキャリア開発、在宅療養支援、難病の患者団体など)、学生の諸外国での国際活動の紹介、教員による医療DX関連のデモンストレーション展示など多岐にわたった。また、食を通じた健康増進を掲げる会社を起業した卒業生による「食がつなぐウェルビーイング」という企画では、卒業生が運営するイチゴ農園によるふるまいや、野菜の摂取量測定を体験できるコーナーに多くの参加者が集った。中庭には、キッチンカーで購入したドリンクや軽食を前に話に花を咲かせる集団が多く見られた。参加者は総勢440名以上となり、旧交を温めるとともに、新たな出会いが生まれる機会となった。


学部開設25周年の記念行事は一段落し、今は記念誌の発刊に向けた作業が進む。さらに、卒業生や縁ある方々と学部との繋がりを継続し、発展させていくことが次の課題である。本学部では、卒業直後は医療施設に就職する者が多いが、その後職場を変える者、看護の資格や経験を活かして転職や起業を目指す者等、キャリアパスが多彩である。25周年の節目に強まった卒業生や関係者との繋がりを活かし、社中協力の体制を整備することにより、次の25年に向けた歩みを豊かなものにしていきたい。


末筆ながら、これまで本学部を支え、育て、見守ってくださったすべての方々に感謝申し上げるとともに、今後ともご指導を賜りますよう、お願い申し上げる。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。